「ぷっ…」
噴き出したのは泰兄だった。
「冗談だよ、勇作」
「え?ええ?」
お兄ちゃんは何が何だかわからない、というように私と隣に座る男性客を交互に見る。
「え?もしかしてこの前言ってた、似てる人って…?」
確認するような目が向けられたので、私は大きく頷いた。
「じゃあ、泰輔兄さん!?」
上ずったお兄ちゃんの声が、店内に響き渡る。
「久しぶりだな。まだ妹の心配してこんなとこまで足を運んでるのか」
いやぁと頭をかくと、お兄ちゃんは「真琴から、泰輔兄さんに似た人がここに来るって聞いてたんだけど、まさか本人だったなんてね、びっくりだな」って言った。
泰兄が何か言いたげに私を見たけれど、わざと知らんぷりをした。
「泰輔兄さん、お元気でしたか。施設を出て以来ですよね」
泰兄と再会したことを、私に隠されていたお兄ちゃん。
それを黙っていた私。
そして当の本人、泰兄。
私のカウンターは思いもかけず、「同窓会」になった。
いろんな話をした。
なつみ園での失敗談や、いたずらがばれて先生にこっぴどく叱られたこととか…。
酔っぱらったお兄ちゃんは「俺は母親似でアルコールはダメなんですよ。父親は強かったんですけどね」と泰兄にからんでいた。
楽しくて、懐かしくて…
このまましばらく時が止まればいいのに、ってそう思った。


