お兄ちゃんを見上げる。
もう30になるんだね。
早いね、お兄ちゃん。
ずっと一緒に生きてきて、ずっと私を守ってくれて。
お兄ちゃんが結婚をしないのは、私のためなんでしょ?
それにこんな妹じゃ、恋にも集中できないよね。
ねぇ、お兄ちゃん。
早く好きな人を見つけて、結婚していいのよ。
もう大丈夫だから、私は…
街はクリスマス一色。
スクランブル交差点を、一大イベントに浮かれた人波にもまれながら渡っている時だった。
うごめくたくさんの人の頭の合間から、私は一人の人物がこちらに向かってくるのを見つけた。
泰兄…!
引き返すにも、もう遅かった。
音もなく絡み合う2つの視線。
私たちはそのまま無言ですれ違った。
でも見てしまったの。
彼が視線を前に戻すその時、唇の端を持ち上げたのを。
ほんの一瞬だったのに、まるでスローモーションのように映った。
まるでバカにしたような、そんな冷たい微笑。
「どうした、真琴」
急に黙りこくった私に、お兄ちゃんが訊いた。
きっとお兄ちゃんは泰兄に気付いていない。
「なんでもないわ」
首を横に振ると、私は動揺を隠すためにお兄ちゃんから離れて、一件の店のショーウィンドウに歩み寄った。
別にこれといって見たいものはない。
ただ、今の私の顔を見られたくなかった。
きっとすごくショックな顔をしてる。
あの泰兄の笑い…
何を思ってあの微笑みを向けたの?
以前Yesterdayに連れてきていた女性とはまた別のきれいな人を連れていた。
優雅で艶っぽい人…。
それに比べて私は、徹夜で疲れ切った顔。
だから、彼は笑ったの?
みっともない、そう思って?


