ふたり。-Triangle Love の果てに


~片桐真琴~

最近になって泰兄は暇さえあれば本棚の整理や、身の回りのものを片付けている。


フローリングの上にあぐらをかいて、次々と段ボールに不要品を詰めてゆく。


「急にどうしたの、大掃除なんかして」


その背中に抱きついて、私は訊いた。


「もうすぐ妻帯者になるからな。独身時代のものでおまえに見られたらヤバイものを処分してるんだ」


そう、私たちはもうすぐ入籍する。


私の誕生日である10日後に。


「なによ、そのヤバイものって」


「見るなよ」


「いいじゃない」


「だめだ」と段ボールの蓋を閉じる彼。


でも見えたの。


経営学や法律関係の書籍を全て捨てようとしていたのが。


…どうして急に?


「これはおまえにやる」


そう言って手渡してくれたのは、世界各国のお酒を紹介した分厚い本だった。


「しっかり勉強しろ。いつか自分の店を持ちたいんだろ」


「ありがとう、大切にするわ」


そうは言ったものの、不安だった。


彼のこの「身辺整理」が…


それに顔つきが変わった。


憑きものが落ちたかのように穏やかになって、前にも増して私に優しくしてくれる。


明け方仕事から帰ってくる私を待っていてくれるし、ベッドに入っても眠りに落ちるまで彼は髪を撫で続けていてくれる。


その不安をさらにかきたてることがあった。


テーブルには通帳と印鑑。


「なにこれ」


身に覚えのない「片桐真琴」名義の通帳。


中を開いて、とまどった。


大金が毎月に渡って積み立てられていたから。


「説明して」


「そんな怖い顔をするな」


「どういうことなの」


「前にも説明したはずだ。俺はいつ死ぬか、いつパクられるかわからない人間だ。おまえにもそれを再認識してもらいたい」


「だからって、このお金はなんなの」


「もしもの時に使え。俺がいなくなってもしばらくは暮らしていけるだろう。そのために前々から用意だけはしていた」


「もしもって…」


いや、そんなこと言わないで。


もしも、なんて考えたくない!


「そうなる心当たりでもあるの?」


たまらずに私は訊いた。


だってこれじゃ、なんだか形見みたいじゃない。