興奮気味の森とは対照的に、俺は醒めた目で画面に羅列する数字を見ていた。
彼はひたすら「すごいじゃん」と繰り返していた。
一通り確認を終えた森はパタンとノートパソコンを閉じると、「で、どうすんだよ、これ」とフラッシュメモリを手のひらの上で転がした。
「さっきも言っただろ。おまえにやるって」
えっ!と一瞬顔が明るくなったが、すぐに「悪いよ、おまえのつかんだネタだろ。これを仕入れるのに結構ヤバイ橋を渡ったんじゃないの?」と言った。
「いいよ、やるよ」
「だめだって」
メモリを俺の手に握らせてくる。
何を言ってるんだよ。
今まで散々俺のアイディアを使ってきただろ。
「おまえに託したいんだ。俺と違って県警への人脈もある森なら、きっといい結果をだしてくれる」
「そう言われてもなぁ…参ったなぁ」
困った顔をしているが、その心の内はウキウキしているに違いない。
もう一押しだ。
「頼むよ、俺の両親の敵を取ると思って協力してくれないか」
森は俺の生い立ちを知っている。
これを使わない手はない。
しばらく唸った後、彼は「わかった」と腕組みをしながら頷いた。
たとえ隠れ蓑と称された隠れ資金でもかまわない。
泰輔兄さんはああ言っていたけれど、もしかしたらバックにあるそれ以上の資金の流れを警察がつかむ可能性だってある。
はなからあきらめることなんてないんだ。
可能性がゼロでない限り、前に進もう。
そのためには、県警の浅井と使うのはやめたほうがいい。
あいつは圭条会と親密な関係にある。
このメモリが浅井の手に渡れば、彼の独断で圭条会に便宜を図ることだってある。
それだけは避けねばならない。
必ず圭条会と相原泰輔に痛手を負わせてみせる。
先ほどまでのどんよりとした気分が、一瞬にして吹き飛ぶようだった。
俺なりの復讐をしてみせる、湧き上がる思いに握り拳を作った。
ここは正攻法でいこう。
だから俺はこうやって森を頼る。
「よろしく…お願いします」
同期なのに「チーフ」と呼ばれる彼に、俺は深々と頭を下げた。


