中央新聞社。
ここまで来ると、俺はふらつく足取りで森のデスクへと向かった。
「げっ!おまえどうしたんだよ。死に神にでも取り憑かれたか」
俺の姿を見た途端、彼は飲んでいたコーヒーを噴き出した。
それほど今、酷い顔をしているのだろう。
俺とは比べものにならないほどの大きなデスクに、立派なチェア。
どうして…
どうして俺はこうなんだろう。
無器用で、何をやっても裏目に出てしまって。
同期の森にもこんなに差を付けられてしまって…
『勇作は優しいね』って昔からみんなに言われてきたけど、そうじゃない。
優しいんじゃない。
ただ意気地がなかっただけ。
勇作…「勇気を作る」…
名前だけが一人歩きして、実がともなっていない。
でも、そんな俺にも真琴がそばで励ましてくれた。
俺の代わりに泣いてくれた。
怒ってくれた。
「私、お兄ちゃんの記事、大好きよ。読んでると心があったかくなるの。きっとお兄ちゃんのことをわかってくれる人がいるから」って。
「だから頑張って」って。
「おーい、どした?」
目の前で森が手を振っていた。
「…これ」
おもむろにポケットから例のフラッシュメモリを取り出すと、俺は彼のデスクに置いた。
「おまえにやるよ」
「なんだこれ」
「圭条会の裏金の流れだよ」
「はぁ!?」
すっとんきょうな声をあげた森に、周囲の視線が集まる。
咳払いを一つしてから、彼は俺の肩を抱き抱えるようにして「ここじゃ何だからさ、出よう」
と歩き出した。
「詳しく話せよ、なんでおまえがこんなの持ってんだ?」
今度は息のような声で訊ねてきた。
「前にクラブAGEHAのオーナーが俺と同じ施設出身だって話しただろ。その人のパソコンから黙ってコピーしてきたんだ」
森は俺の説明に驚いたようだったが、とにかく内容を確認したいということで人気のない男子更衣室にノートパソコンを持ち込んだ。


