お兄ちゃん曰く。
そこにハトが巣を作ったのはいいが、雨の日にはビショビショになっていたという。
泰兄は「子どもを育てるのに、こんな場所を選びやがって。親になる資格ねぇよ」と吐き捨てたらしい。
あまりに荒っぽい言い方をしたので、お兄ちゃんは彼が巣を落としてしまうんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてたんだって。
でもそうじゃなかった。
雨風から巣を守るように、どこかで拾ってきたビニール傘をひさしにくくりつけてたんだって。
「その時、ああこの人は本当に優しい人だなぁって思った」
「ふぅん…」
「だからその泰輔兄さんがどうしたんだよ」
おかしなやつだなぁとお兄ちゃんは笑って、またご飯を口に運び始める。
「うちのバーにね、泰兄によく似たお客さまがいらっしゃるの。で、ちょっと思い出しただけ」
その人がまさに泰兄だとは、私はあえて言わなかった。
やっぱり言いにくい。
彼に「マコ」って呼んでもらいたくてずっと待ってた、それが淡い恋心だったのは確かだから。
お兄ちゃんは、そんな気持ちを私が抱いていたなんて知らないだろうけど、でもこれ以上泰兄の話をするのはなんだか…恥ずかしい。
「ほら、お兄ちゃん!何してるの、遅刻よ!」
私はその場の空気を変えるように、手をパンパンと打った。
「おまえが話をふってきたくせに」
慌てたお兄ちゃんは、ご飯をかき込んでむせていた。


