ふたり。-Triangle Love の果てに

~相原泰輔~


今日はプライベートバンク・アペルトの高雄の事務所に赴くはずだった。


だが約束の時間前に彼から電話があり、キャンセルしてほしいという。


理由は聞かなかったが、切羽詰まった口調からは問題が起きたことは容易に察しが付いた。


「相原さんの件に関しては滞りなく進んでいますから、ご心配なく」と高雄は何度も繰り返して電話を切った。


マンションの地下駐車場に車を止め、エレベーターに向かう。


まだマコはいるはずだ。


俺が急に帰ってきたらきっと驚くだろう。


ボタンを押すまでもなく、エレベーターの表示が「BF1]を示していた。


静かに扉が開くと女がひとり、慌てたように降りてきた。


外に人がいるとは思っても見なかったのだろう、俺とぶつかりそうになり、ハッと顔を上げた。


同時に女は手に持っていた何かを落としてしまった。


それはまるで氷の上を滑るように回転しながら、俺の足下でぴたりと止まった。


フラッシュメモリだった。


俺がそれを拾って渡す。


「どうぞ」


「あ…ありがとうございます」


おどおどしたように礼を言った女は、ひったくるようにそのフラッシュメモリを俺から受け取ると、足早に駐車場へと向かう。


彼女と入れ替わりにエレベーターに乗り込んだ俺。


なぜか先ほどの女が気になって、駐車場を覗いた。


どこかで会った気がする。


彼女が来客者用に停めた、淡いピンクのマーチに乗り込んだところで、エレベーターの扉が閉まった。


女という生き物はああいうデザインや色が好きなんだな。


そういえば、マコも以前同じものに乗っていた。


同乗するのが恥ずかしかった記憶がまだ新しい。


確かあの車は勇作が引き取ったと言っていたが、さすがにあいつも買い替えただろう。


男が普段乗るにはちょっと、な。


それにしてもさっきの女。


どこかで見た気がするな。


クラブのホステス…いや、そんな雰囲気ではなかった。


あれこれと考えを巡らせていると、地上30階まではあっという間だった。