ふたり。-Triangle Love の果てに



彼女をリビングのソファーに座らせた。


血の気の失せた彼女はすぐに横になる。


「ここでいいんですか?ベッドのほうがゆっくりできますよ」


私が勧めても、「ううん、ここで充分よ。ありがとう」と弱々しく言った。


彼女の体調不良の原因が「つわり」だったなんて。


「すごく嬉しいことなのに、妊娠するってことがこんなにつらいものだなんて思ってもみなかった。ずっと乗り物酔いをしてる感じなの」


そんな彼女の前に冷たいお茶を置くと、私は遠慮がちに訊ねた。


「あのう、赤ちゃんのこと、兄は知ってるんですか」


眉間に皺を寄せたまま、首を横に小さく振る翠さん。


ということは、お兄ちゃんはまだ何も知らないんだ。


「勇作さん、今仕事で大変なの。だから余計なことで気を散らせたくなくて」


余計なこと、だなんて。


新しい命が宿ってるのに…


でもふと思った。


もし私が翠さんの立場だったなら、同じように彼が大きな仕事を抱えている時には告げないだろうって。


もし相手が妊娠しているとわかった途端、仕事に集中できなくなったらいけないから。


私もきっとこういうことは、タイミングを見計らって報告すると思う。


「ごめんなさい、お手洗いを貸してもらってもいい?」


そろそろと翠さんは上半身を起こした。


「どうぞ、こっちです」


ふらつく彼女に肩を貸しながらトイレの前まで案内する。


「ありがとう」


リビングに戻った私は大きな息をひとつついた。


翠さんが妊娠…


お兄ちゃんがパパになるんだ。


じわじわと温かいものが胸に広がる。


そうなれば私もおばさん、って呼ばれるのね。


でもそんなの嫌だから「真琴ちゃん」か「おねえちゃん」って呼ばせようかな。


いけない、私ったら驚きのあまり「おめでとう」ってまだ言ってなかった。


翠さんが戻ってきたら一番に言おう。


「おめでとう、私も嬉しい」って。