毎月決まった日に、私は両親のお墓参りに行く。
そのことは泰兄には話してはいない。
だって、亡くなった両親のお墓参りに行くだなんて、彼にとっては嫌味に聞こえてしまうかもしれないから。
やはり、心のどこかで彼が圭条会の人間であることが引っかかってる…
彼を愛してる。
心底愛してる。
だけど、あの事件のことで完全に圭条会を許したわけじゃない。
泰兄が両親を殺したわけじゃないのだけれど、このことに関しては今も複雑な心境のまま。
ある月命日、彼がいつもより早めに出かけようとする私を呼び止めた。
「今日は冷える。車で送っていこう」
「いいの、今日はちょっと寄る所があるし」
しどろもどろに答える私。
「その『寄る所』に送っていくと言ってるんだ。俺もそこに行かなきゃいけないと思っていた」
泰兄…?
「行くぞ」
強く手を引かれ、私たちは部屋を出た。
外は雪がちらついていた。
行き先を告げていないにもかかわらず、泰兄の運転する車はとある墓地の駐車場へと滑り込む。
「…どうしてここだって?」
運転席の彼の顔がまともに見られない。
膝に置いた指を絡ませたり解いたりしながら、私は返事を待った。
だけど返ってきたのは、思いもよらない言葉だった。
「手を合わせても、かまわないか」
「え?」
「おまえのご両親に手を合わせたい」
喉の奥が痛くなる。
苦しく締め付けられるような胸に手を置くと、私は「それは圭条会の代表として?」と低い声で訊ねた。
もし泰兄が組織の一員としてそうしたいと言うのであれば、私は…
だけど、彼は真っ直ぐに前を見つめたままきっぱりと言ったの。
「違う、俺個人としてだ」と。
「あの事件の謝罪もしたいと思ってる。それは組織の人間としてのものかもしれない。だが、今日はそれだけが目的じゃない。おまえとこういう関係になった以上、一人の男としてご両親に頭を下げたい」
「泰兄…」
「頼む」
その時わかったの。
彼は、私と付き合ってることに負い目を感じてるんだって。
圭条会の人間だから…
世間からは反社会組織の一員だと見なされているから…
だから私たちの愛は、許され得ぬものなのだと…
周りの誰からも祝福してもらえ得ぬものなのだと、そう思ってるに違いない。
「頼む」
目を閉じた彼の眉間の皺が一層深くなる。
それがとても苦しげに見えた。
泰兄。
私のことであなたが苦しむことはないのよ。
あなたを選んだのは私なんだから。
それにね、反対ばかりされてるわけじゃないのよ。
シトラスのゆり子さんだって、yesterdayのマスター夫妻だって、豊浜ののぞみだって。
この私たちの愛を祝福してくれる人はいるのよ。


