通りを行き交う車のヘッドライトが、くらい部屋の天井をせわしなく走る。
ベッドに仰向けになったまま、こみあげてくる得体の知れない不安に俺はさいなまれていた。
社を出た後、シトラスに向かった俺。
そこにいるはずの真琴は、いなかった。
ゆり子さんが言った。
「なんでも真琴ちゃんの古いお友達が大けがしちゃったみたいで。その方、ご両親もいなくて頼れる親戚もいないみたいなの。だからその方の入院中だけでも真琴ちゃんが身の回りのお手伝いをしたいって」
「その友達の名前は聞いてませんか」
「さぁ」
「男性か女性かも?」
「ええ。もしかして勇作さん、相手が男性なら心配?」
「…そんなことはありませんが」
うふふ、と口元に手を当てて笑うゆり子さん。
「真琴はいつから休んでるんですか?」
「そうね、もう1週間くらいになるかしら」
圭条会と須賀一家の間で発砲事件があったとされる時期とほぼ同じだ。
「じゃあ、Yesterdayの方も休んでるんでしょうね」
「さぁ、そこまでは」
いつもの穏やかな微笑みを称えながら、小首を傾げるゆり子さんからは何かを隠しているようには思えなかった。
俺は出されたコーヒーに手をつけることなく、シトラスを出た。
Yesterdayでもやはり真琴はいなかった。
そしてマスターからゆり子さんとまるっきり同じことを言われた。
友達が大けがをして…と。
俺は次に違う質問をしてみた。
この名前を出して、果たしてマスターはどんな反応を見せるのか…
「ところで、相原さんという男性がよくここに来ていましたよね。俺と同じ施設出身者で、以前ここで一緒に飲んだことがあるんですけど。最近も彼、ここに来ますか?」
「ああ…相原さんねぇ…」
明らかに言いよどむ。
「あの人は最近見てないなぁ。な?」
そう言って、奥さんの恵美さんに同意を求める、いや助けを求めるといった感じの方が適切だ。
「ええ、いらしてないわよ」
しかも彼女は俺と目を合わせようとはしない。
「そうなんだ、また一緒に飲みたかったのに。なぜ来なくなったんですかね」
俺はわざとらしく訊いてみたが、ふたりはそろって首を横に振るばかりだった。
その様子がぎこちなく見えたのは、俺の考えすぎだろうか?
いや、決してそうではない。


