「県警のおえらいさんに、ちょっとばかり金を包んでおいたさ。それに見返りもばっちりとな」
「見返り?」
「チャカ3丁だ」
なるほど、取引というわけか。
発砲事件はなかったことにする、その代わりに拳銃の摘発をさせる。
これで県警も対立する組織のくだらないケンカ云々よりも、拳銃を摘発し持っていたやつをパクッた方が検挙率があがるというものだ。
ヤクザと警察の危険ながらも、甘い関係。
警察官だって人間だ。
金を積めば、堕ちるやつだっている。
だからこそ、世の中俺たちみたいな者が生き残れるわけだ。
「それで俺の代わりに誰かがパクられたわけですよね」
「おまえが心配することはない。それはうちの組から出しておいた。そいつにはムショから出てきたらそれなりの役職を与えると言ったら、喜んで行ったさ」
申し訳ありません、俺が頭を下げると鶴崎親分は首を横に振った。
「俺のほうこそ申し訳ない。おまえに何かあったら、直人にどんな面提げて謝ればいいのかわからん。正直、生きた心地がしなかった」
大口を開けて笑う組長とは対照的に、マコは黙りこくりうつむいたままだった。
「こっちに来い」
やっとふたりきりになれたところで、見舞客の持参した花を花瓶に生けていたマコを呼んだ。
さっきの会話がよほどつらかったのだろう、彼女は疲れた顔をしていた。
無理もない、えげつない内容の話だったからな。
「顔色が悪い。だから外に出てろと言っただろ」
「平気よ」
強がるマコを俺は引き寄せた。
一日に何度こうしてこの胸に抱き寄せることか。
その度にこの女は強くなっていく。
「もう逃げたくないの。あなたのことを何でも知りたいから。そのためならどんなことでもできるわ」
マコ…おまえが愛しくてたまらない。
あの頃、施設で朝露に濡れたクローバーをつんでいた小さな指が、今はこうして俺の手を握っている。
讃美歌を口ずさんでいた幼く柔らかそうな唇が、今は俺の名を呼ぶ。
過去のあんなに小さな愛が再び出会って、今こんなにも大きくなった。
俺はマコを、この愛をもう手放したくない。
だから勇作、すまない…
もうこいつをおまえには
返さない…


