その時、勝平さんが先生を連れて戻ってきた。
「泰輔さんっ、何やってんすか!」
起き上がろうとする彼を見て、そう叫ぶ。
主治医の先生も、看護師と共に泰兄をおさえつけにかかった。
でも泰兄の目は…
彼の目は、体力を失った今でさえ怖いほどの鋭さで私をにらみつけたまま。
「勝平、この女をつまみだせ…!」
「は?いや、でも泰輔さんのためにずっと…」
「言われた通りに…しろっ」
「相原さん、落ち着いて!」主治医の先生が鎮静剤を看護師に指示する。
ベッドに寝かされながらも、泰兄は私を病室から追い出すように言い続けた。
「早く連れ出せ…!」と。
困り顔の勝平さん。
「私は出て行かないわ」
たまらず言った。
「なんだ…と?」
「あなたのそばにいる、そう決めたから。だから出て行かない」
「勝平、早くしろ…!」
「いや、いやよ!もう離れないわ」
私はもう一度泰兄の手を取った。
振り払おうとするけれど、今の彼にそんな力はない。
「離れたくない!」
「……」
「もう離れたくない!泰兄、私もう離れたくないの!」
そう叫んで、彼の胸にしがみついた。
「…やめろ」と苦しそうな彼。
「いやよ」
「俺は圭条会の人間だ。おまえが憎んでも憎みきれないな…」
「わかってる、そんなこと」
「おまえの憎しみは、そんなに簡単に消えるものなのか」
「いいえ、まだあなたが憎い、組織が憎い。でもそれ以上に、私にはあなたが必要なの」
「だが、俺はおまえのことなんて…何とも思ってない」
「かまわないわ!」
私は言い切った。
「あなたが私のことをどう思っていてもかまわない。でも私に少しでもすまないと思う気持ちがあるのなら、そばにいさせて。それがあなたの私への償いよ」
「…勘弁してくれよ」
そう呟いたきり、もう彼は何も言わなかった。
でも弱々しく震える手で、そっと私の頭を抱き寄せた。


