病室の前には、ふたりの屈強な男が立っていた。
私が近付くと、目の前に立ちはだかる。
「何の用だ」
「相原泰輔さんのお見舞いにうかがいました」
名前を告げると、男の一人が部屋に入っていった。
この中に泰兄がいる…
のぞこうとすると、再び大男が視界を遮るように私の目の前に立った。
しばらくして「どうぞ」という女性の声がした。
病室は物々しい雰囲気だった。
広い部屋にベッドがひとつ。
そこに横たわる顔色の悪い、若い男性。
「泰兄…!」
私は駆け寄り、力の抜けたその手を握った。
たくさんの電極が身体につけられていて、モニターの数も一つや二つどころじゃない。
そこからはいろんな電子音が規則的に聞こえてきていた。
酸素マスクをしたままの弱々しい息遣い。
「この人が?」と、ベッドをはさんで向かい側に座っていた、恐ろしく美しい和服姿の女性が、部屋の隅にいた勝平さんに訊いた。
30代後半…くらいだろう。
こちらがたじろぐほどに綺麗な人。
「はい、泰輔さんの…その、えっと…」
その後の言葉を、彼は濁す。
私たちの仲が終わったことを知っているから。
「彼とお付き合いさせていただいています」
代わりに私が力強く答えた。
「そうですか。私は圭条会鶴崎組組長の家内で、ルリと申します」
「片桐真琴です」
簡単な自己紹介の後、ルリさんは「主治医の先生の話では、弾の摘出には成功したそうよ。あとは意識が戻るのを待つだけだとおっしゃったのだけれど…まだ…」と抑えた声で言った。
「…そうですか」
「勝平、何をしているの。真琴さんに椅子をお出しして」
しばらく私たちは目を閉じた泰兄の顔を見ながら、モニターの音を聞いていた。
「そろそろ私は一度自宅に帰らせていただきますね。真琴さんがついているから、大丈夫ね」
胸元のあわせを調えながら、ルリさんは立ち上がった。
「勝平、何かあったらすぐに主人か私に連絡するように」
「わかりました」と深々と頭を下げる勝平さん。
「それと、真琴さん」
向かいにいたルリさんが、わざわざ私の所まで回ってきた。


