~片桐真琴~
天宮先生の話を聞いているうちに、私の心は激しく震えだしていた。
「泰輔は身よりのないその女性の葬式を、うちの教会でしてもらえないかと言ってきた」
「…それで?」
「したさ。俺と泰輔、ふたりだけでな」
ふたりだけで…
先生は左右の指を組み替えた。
「棺の前で、あいつ泣いてたよ。親に捨てられても涙ひとつ見せなかったくせに、血もつながらない赤の他人のためにな」
涙を…
彼が涙を…?
「あいつほど愛に飢えて愛を求めて、そして人を愛せるやつはいない、と俺は思ってる」
「先生…」
「真琴は、泰輔を愛してるか?」
天宮先生は穏やかな笑みを浮かべながら、私にこう訊いた。
「どうなんだよ?」
ええ、愛してる。
やっぱり愛してる。
両親を奪った組織の一員だとわかってからも、気がつけばこの心はいつも彼に向こうとしていた。
愛してるのに許せなくて…
許せないのに、愛さずにはいられなくて…
私は頷いた。
何度も何度も。
「泰輔のところに行ってやれよ」
「だけど」
「ためらうことはない。この世には、幾千幾万の愛が常に飛び交ってるんだ。その愛がたったその中のひとつでも、おまえにとっては唯一のものだろう、違うか?」
胸を撃ち抜かれたような、その言葉。
「真琴ちゃん、今日はもういいから…」
ずっと黙って先生とのやりとりを訊いていたゆり子さんが、そっと私の涙を拭ってくれた。
「彼のところに行ってあげて」
「ゆり子さん…」
「その気持ちを伝えなきゃ、後悔するわ。ね、私はずっと苦しんだの。今でも後悔してる。だから、あなたはそうならないで」
まっすぐ見つめるゆり子さんの瞳が揺れた。
「ね、早く」


