キヨさんは畳の上でうずくまっていた。
「何やってんだよ!」
抱き起こすと、彼女は力なく笑った。
息が荒い。
「ああ、あんたかい。これ…」
震える手で茶封筒を差し出す。
「あれほど持って行きなって言ったのに。こんなとこで情に流されてちゃあ、極道の世界で出世なんか夢のそのまた夢だよ…」
「しゃべるな!すぐに救急車呼んでやるから」
「ああ、ありがとね。あんたは本当にいい子だ…だね…」
キヨさんはそれを最後に何も言わなくなった。
どんなに俺が彼女の名を呼ぼうとも、その目を開けることはなかった。
そこでプツリと俺の目の前は真っ暗になる。
古い映写機の中で、フィルムが切れてしまったかのように。
俺はもう戻れないのかもしれない。
このまま闇の世界に沈んでゆくんだな、そう思っているとふいにマコの声がした。
『人を殺したって本当?』
怯えたような声。
そうか、あの夜のことか。
せっかくあの日はおまえの誕生日だったのにな。
台無しにしてしまって、すまない。
『どうなの、本当なの?』
…ああ…
ああ、そうだ。
俺のせいでキヨさんは病院を追い出された。
だから死んだんだ。
俺が殺したんだ…
俺が…
そんな男がおまえを愛する資格なんて、ましてやおまえに愛される資格なんてなかったんだ…
なのに、俺はそれを願った。
こういうのを天罰、っていうんだろうな。
だからこんなことになってしまった。
なぁ、マコ。
マコ…
最後におまえに一目だけでも…
…会いたかった…


