店を出て別れる間際に、彼女は私にこう言った。
「本当に優しい妹想いのお兄さんよね。他人からしたら、あなたたち兄妹は恋人みたいにしか見えない」って…
気分転換にやってきた本通りだったのに、かえって重たい悩みをひとつ持ち帰ることになってしまった。
お兄ちゃん…
お兄ちゃんの好きな人って、一体どこの誰?
隠さなければいけないような相手なの?
…まさか、ね。
まさか不倫とか…?
そう勘ぐらずにはいられない、千春さんの思わせぶりな言い方を思い出す。
お兄ちゃんに限って、そんなことするわけない。
じゃあ、相手は誰?
学生時代や、話に出てくる女性をいろいろ思い浮かべてみたけれど、当てはまる人なんていなかった。
お兄ちゃんが私の幸せを願ってくれたように、私もお兄ちゃんの幸せを心から望んでいたのに。
人を愛するということは、こんなにも周りの人たちを傷付けてしまうものなのね。
だったら私はもういい。
もう人を愛したりなんてしない。
ううん、できない。
だって私は、一生分の愛を使い切ってしまったのだから…
恋は…
愛は…
果てしなく残酷…


