白い磁器のカップに、赤みがかった紅茶をなみなみと注いでゆく。
一口飲んで、少し濃かったかな、と思う。
目の前の千春さんはティーサーバーの沈んだ茶葉をじっと見つめたまま。
そして沈黙は続く。
まわりの明るい雰囲気の中、私たちのテーブルは切り取られたように重々しい空間であることは間違いなかった。
訊きたいことはいろいろあったけれど、あえて私は待った。
どうやって切り出せばいいのかわからなかったのもある。
カップをソーサに戻すと、それがやけに大きな音に聞こえた。
私、お兄ちゃんと千春さんはてっきりうまくいってるものだとばかり思っていた。
お兄ちゃんから連絡がないのは、きっとそのせいだって…
私に連絡する間もないくらいに、幸せなんだろうって…
色々と考えを巡らせていると、「片桐くんと一緒に住んでたアパートにまだいるの?」と千春さんがようやく口を開いた。
引っ越しをする予定だったのに、泰兄とのことがあってズルズルと引き延ばしたまま現在に至る。
当初お兄ちゃんも女の一人暮らしは危ないからと、早く引っ越すように言ってたけれど、私はあそこが好き。
シトラスやYesterdayにも近くて便利だし。
強い風が吹く日なんかは、家の中まで風が入り込んでくるけれど、でもかえってそれが安心する。
風でも私を心配して様子を見に来てくれるんだ、って思えるから。
「なんだか引っ越しも面倒になっちゃって…古いですけど居心地いいんです。大家さんもおせっかいだけど悪い人じゃないし」
「そうなんだ」
「あの…千春さん。兄が何か失礼なことをしたんでしょうか」
自分でもびっくりするくらい、私は唐突に本題に入った。
「え?」と目を大きく見開く千春さん。
「だって兄は千春さんと一緒に過ごすために、私に別々に暮らさないかって言い出したんです。ですから…」
「本当にそうかな」
その答えに顔を上げた私の目に、悲しげな千春さんが映った。


