「ごめん…やっぱりこういうの良くないよ」
あれほど火照っていた身体が、波が引くようにすっと熱が冷めていく。
「どうして」
「だって、俺たち付き合ってるかどうかもまだあやふやだし」
「……」
「そんな中途半端な関係でこんなこと…」
「じゃあ、今ここでハッキリして」
ブラウスがはだけて、鎖骨がなまめかしくのぞいている。
「千春ちゃん…」
そして真剣な彼女の視線から逃れるように、俺は床に落ちた書類の中にまぎれた写真に目を落とした。
それに気付いた彼女も、ベッドから床をのぞきこむ。
「やっぱり…」
震える声。
「やっぱり片桐くんは…」
そう言ったきり、下唇をかんだ。
そして乱れた服装を素早く直し、彼女はバッグを片手に部屋を飛び出した。
追いかけるべきなのはわかっていた。
だけど、俺は呼び止めることすらしなかった。
頭ではわかっていても、心と身体はそうは動かない。
心と身体のほうが密な関係を築いているのだと、この状況下でも思っていたくらいだ。
俺はその写真を拾い上げた。
やっぱり俺はだめだ。
もう無理だよ…
このままじゃ自分を見失ってしまうかもしれない。
俺の手にある一枚の写真。
そこには笑う俺の横で、新しい一歩を踏み出したばかりで緊張した面持ちの若いバーテンダーが映っていた。
そう、黒い髪と大きな瞳が印象的な…
俺の大切な「妹」が…


