店内にはやけにハイテンションなマスター。
彼も私に気を遣ってくれてるに違いない。
「やだ、お花がもうダメね。今日一日もってくれると思ったのに。どうせなら月曜日に新調したかったわ」
恵美さんが残念そうに、店の中央に置かれた大きな花瓶を見る。
「仕方ないわね、今日は土曜でお客さまも多いものね。買ってくるわ」とエプロンをはずそうとした恵美さんに私は言った。
「着替えたら、私がウエノに行ってきます」
「そう?お願いしてもいい?じゃあ電話だけして、準備してもらえるように言っておくから」
じっとしてるより、身体を動かしているほうが気が紛れる。
それにマスターや恵美さんに大丈夫だってことを見せたいし、ケンちゃんに昨日のチューリップのお礼も言いたい。
私は店を出て、ウエノに急いだ。
外は昼間の強烈な陽射しの余韻で、日が沈んだ今でもアスファルトからムンムンと熱気がたちのぼる。
「おはようございます、Yesterdayです」
「よ!真琴ちゃん。もうちょっと待ってくれよ、すまないね」
「いえ、こちらこそ急にお願いしてしまって」
店主のおじさんは、手際よくハサミで余分な葉を切り落としては次々と花を束ねていく。
その間に、私はケンちゃんを探して店内を見回した。
「あの」
彼は腰を90度に折るように、ほうきで散らばった花びらや葉を集めていた。
遠慮がちに声をかけた私に、無言で首だけをこちらに向ける。
「あの…チューリップありがとう。嬉しかったわ」
するとのそのそと腰を伸ばし、私の真正面に立った。


