ふたり。-Triangle Love の果てに


~片桐真琴~

今まで生きてきた中で、最低最悪のバースデー。


何もかも夢だったんじゃないかと思う。


夢でありますように、数え切れないくらいそう思った。


思い出したくない、そう願えば願うほどに、あの時の光景が蘇る。


赤いバラの花びらが散る向こうで、彼が哀しそうに私を見ていた。


赤。


やっぱり赤。


私から幸せを奪うのは「赤」なんだ。


泰兄に言われるまでつけていた真っ赤な口紅は、ある意味「魔除け」だったのかもしれない。


だってその口紅をしなくなった途端、私の不幸をあざ笑うかのように赤い花びらが目の前を舞ったのだから。


ベッドから壁にかけた時計を見上げる。


もう午後1時。


帰宅してから、とうとう一睡もできなかった。


あれだけ泣いたのに、疲れ果てて眠りにおちることすら叶わない。


「仕事…行きたくない…」


枕に顔をうずめる。


シトラスも、Yesterdayでの仕事も休んでしまいたい。


ここでじっと泥のように眠ってしまいたい。


せめて眠ることができるのなら、その間だけでも彼のことを忘れられるのに。


でも、どうやっても眠りは私に訪れることはなかった。


あきらめて鏡の前に座る。


真っ赤な目に、腫れた瞼。


あまりの醜さに、ホットタオルを目の上にのせた。


じんじんと目の奥が熱くなる。


でもそれはタオルのせいじゃなかった。


涙腺が緩むのを必死にこらえようとして、熱くなってしまう。


大丈夫よ、真琴。


あんな男のことなんて、忘れてしまえばいい。


なんてったって、何の罪もないお父さんとお母さんの命を奪った組織の一員なんだから。


あれほど憎らしい組織なんだから。


今はちょっと混乱してるだけ。


落ち着いてよく考えたら、答えはすぐに出る。


簡単なことよ。


だから彼のことだってすぐに忘れてしまえる。


この胸の痛みだって、あっという間に消えていくはず。


「しっかりしなさい、真琴」


頬をピシャピシャと叩くと、私は風呂に入った。


何もかも洗い流したい気分だった。