でもそのコンクールのグランプリを受賞したのは、森さん。
その内容を聞いて、私は耳を疑った。
だってお兄ちゃんのアイディアそのものだったから。
頭に来た私は声を荒げてお兄ちゃんに詰め寄ったけれど、当の本人は笑ってこう言った。
「いいかい、真琴。森には華がある。同じ企画を出してもなぜかあいつのほうが人を惹きつけるんだ。俺が出してたらボツになってたよ。だからあいつに託したんだ」って。
それ以降お兄ちゃんが社内の企画コンテストに参加することはなかった。
そして森さんは、お兄ちゃんから奪った企画が大当たりし、トントン拍子に出世していった。
そんな彼とはもう縁が切れたと思っていたのに、今私の目の前でヘラヘラと薄ら笑いを浮かべて座っている。
「いやぁ、真琴ちゃん。すっかり見違えたね」
「お久しぶりです」
私をなめ回すような視線がたまらなく不快。
お兄ちゃんは私を見ると、森さんに気付かれないように片目をつぶった。
「ごめん」って言ってるみたい。
仕方ないわね、ここはお兄ちゃんの顔を立ててあげる。
私は営業用のスマイルを森さんに向けた。
「何になさいます?ウィスキー?それともワインもいいものを置いてございますけれど?」
お兄ちゃんってば、どうせなら千春さんを連れてくればいいのに。
髪まで切ってもらっちゃって。
しかも、すっごく似合ってる。
こんなに髪の短いお兄ちゃん、久々に見た。
高校の時以来かな?
お兄ちゃんと千春さん、ふたりうまくいくといいな。
私、千春さんになら「お義姉さん」って素直に呼べそうな気がするもの。


