外は雨だった。
仕事から帰ってきた時は降ってなかったのに…
一度戻って、傘を2本手にとる。
いや、1本でいい。
きっと見つけ出して抱きしめてやろう。
その肩を強く強く抱き寄せてやろう。
再び開いてしまった真琴の傷口を思うと、いてもたってもいられなかった。
真琴…!
俺は雨に濡れた本通りに向かった。
平日の上に雨とあっては、人通りも少ない。
真琴が行きそうなところを必死でまわった。
だけど、どこにもいなくて…
雨も次第に強くなる。
春の雨は思いの外、冷たい。
スニーカーがびしょ濡れで、靴下まで浸透してきた。
足先が感覚がないほど冷えきっていた。
真琴、どこにいるんだ?
電話にも出ない。
真琴、真琴、真琴…!
息の白さが増してゆく。
すると、上着のポケットが突然震えだした。
「もしもし!真…」
恵美さんからだった。
彼女もマスターと一緒に心当たりのある場所は回ってくれたという。
『これだけ探しても見つからないのなら、家に帰ってるかもしれないわね』
「そうですね。俺、もう一回りしてから家に戻ってみます」
電話を切ってから、ふと浮かんだ人物がいた。
まさかとは思ったけれど、ここまで来たんだ、行ってみるしかない。
頭上に何百もある店の看板を見上げた。
どうかそこに真琴がいてくれますように。
どうかそこに真琴がいませんように。
正反対の複雑な気持ちが入り乱れていた。


