夜の街は危険がつきもの。
酒に飲まれた男達が些細なことでもめ事を引き起こし、時に血を流す惨事にまで至る。
Yesterdayでも小さないざこざは今までにもあった。
そのたびにマスターと恵美さんの器量と機転でなんとか収められていた。
だけど、そうもいかない事態が起こってしまった。
マスターの奥さん、恵美さんのカウンター席でのこと。
女性がひとりで訪れることも多いこのYesterday。
そんな女性を目当てに来店する男性客も中にはいる。
ある夜、泥酔した男性客がひとりで飲んでいた女性を口説き始めた。
こういうことに慣れているのか、彼女はやんわりと断った。
けれど、その男はしつこく言い寄る。
恵美さんが間に入り、怖がる彼女をカウンターの中に招き入れた。
女性を一度奥に避難させ、男を落ち着かせようと思ったらしい。
でもその男はカウンターの中にまで押し入ってきた。
ふらつく足取りで、あちこちにぶつかりながらボトルを数本落として割った。
「お客さま」
止めに入ったマスターに、男は急に殴りかかった。
「マスター!」
騒然となる店内。
何人もの男性客が男を取り押さえようとしてくれたが、酒の力は時として脅威となる。
男は誰彼かまわず拳を振り回し、いくつものグラスを割り、床一面その破片でうめつくされた。
私は電話を手に取った。
「警察に連絡します!」
「待つんだ、真琴ちゃん!」
その手をつかんだのはマスターだった。
唇が切れて、血が滲んでいる。
「でも早くしないと…」
「俺が連絡するから、真琴ちゃんは他のお客さまを店の外にご案内して」
私は頷くと、女性客を優先に店の外へとお客さまを連れ出した。
「本日のお代は結構ですので…」
一人一人に説明している間にも、警察が来てくれるものだとばかり思っていた私。
でもサイレンの音すら聞こえない。
マスターは通報できたのかしら…
一抹の不安を覚え店を振り返った時、若い男が数人、中に入っていくのが見えた。
警察?
騒ぎがどうなったのか気になっていた私は、急いで店に戻った。


