最初は鉛筆だった。

小学校の時、授業中にちらりと隣を見ると、美麗が鉛筆をがしがしとかじっていた。

鉛筆をかじる男子は何人かいたから、みっともないと思いつつもさして気にしていなかったのだが。


ある時、彼女が私の肘をつついてこう言った。


「ねえ、鉛筆貸して」


私の鉛筆までかじられてはかなわないから、当然断った。


「自分のがあるでしょ」


そう言って開いたままの美麗の赤い筆箱をのぞき込めば、消しゴムのかけらが転がっているほかは空っぽだった。


問えば、彼女はにやりと笑う。


……食べちゃった。