私は無我夢中で彼女の手を払い、窓枠から外へ飛び出した。
黒い瓦屋根の上へ降り立ったと同時に、ばりんとせんべいを割るような音がして、思わず振り返る。
美麗が、窓枠を外してそのかどを口へと押し込んでいるところだった。
「ケーキはおいしい。
菜月ちゃんにも分かるよね、全てがどうでもよくなるあの幸福感」
あっと言う間に美麗は窓枠をたいらげると、私の立つ屋根へ降りてきた。
「ああ、おいしそうな世界が広がってる。
待ってて、菜月ちゃん。
このオードブルを食べ終わったら、次は菜月ちゃんの番だから」
まるで食べ放題の店にでも来たように、彼女はらんらんと目を輝かせる。
私はあわてて屋根から物置へ飛び移ると、服が汚れるのもかまわずに足場を探して地面へ降り、美麗の家の敷地から走り出た。
背後からは、めりめり、がらがらと壮大な食事の音がする。
ちらりと振り返ったら、街路樹の幹をかじっている彼女が見えた。
それはもう、幸せそうな顔をしていて。
たぶんその時だ。
ある程度先のばしにすることはできても、私は美麗から逃れることはできないと、そんなことを私は悟ってしまった。
黒い瓦屋根の上へ降り立ったと同時に、ばりんとせんべいを割るような音がして、思わず振り返る。
美麗が、窓枠を外してそのかどを口へと押し込んでいるところだった。
「ケーキはおいしい。
菜月ちゃんにも分かるよね、全てがどうでもよくなるあの幸福感」
あっと言う間に美麗は窓枠をたいらげると、私の立つ屋根へ降りてきた。
「ああ、おいしそうな世界が広がってる。
待ってて、菜月ちゃん。
このオードブルを食べ終わったら、次は菜月ちゃんの番だから」
まるで食べ放題の店にでも来たように、彼女はらんらんと目を輝かせる。
私はあわてて屋根から物置へ飛び移ると、服が汚れるのもかまわずに足場を探して地面へ降り、美麗の家の敷地から走り出た。
背後からは、めりめり、がらがらと壮大な食事の音がする。
ちらりと振り返ったら、街路樹の幹をかじっている彼女が見えた。
それはもう、幸せそうな顔をしていて。
たぶんその時だ。
ある程度先のばしにすることはできても、私は美麗から逃れることはできないと、そんなことを私は悟ってしまった。



