ホールケーキ・モンスター

美麗の部屋は2階にあった。

階段をのぼり、2人で彼女の部屋のドアの前へ立つ。


美麗は私の顔をのぞき込んで表情を確認してから、さあっとドアを開け放した。


一瞬にして、部屋の中の様子が視界いっぱいに広がる。


その時の私に浮かんだ感情が何だったのか、今もって分からない。


まず目についたのは、部屋一面に散らばる黒い粒だった。

粒といっても、バランスボールほどの大きさがある。

その黒粒の正体はすぐに分かった。

「無」だ。


照れたように、美麗は言う。


……食べちゃった。