ホールケーキ・モンスター

食事を終えた美麗に、私は他愛のない話をしていた。

学校のことや部活のこと。
格好いい先輩のこと。


だが美麗は明らかにうわの空で、イスに座ったままやたらそわそわと体を動かす。

それを注意すると、彼女はうつむいた。


「お母さんが怒るから、家の物は自由に食べられないの。

でも私、食べたくて食べたくて仕方がなくなっちゃう時があって」


改めてリビングを見渡してみる。

花のあしらわれた壁紙に、アイボリーを基調に整えられた家具。

レースのカーテンは暖かな日差しと風でひらひらと揺れて、棚の上には可愛らしい色とりどりの雑貨が置かれている。

非常に趣味のいい、甘い感じのする愛らしい空間だった。


私がそれを告げると、美麗は何度もうなずく。


「分かるでしょ、この甘い空気。

チョコレート色のテーブルにかかった、生クリームみたいにきめの細かいテーブルクロス。

マジパンよりも鮮やかな花瓶と花。

スポンジよりもふわふわしたカーペット、舌を焦がすテレビの画面。


私ね、全てのものがケーキ色に見えるの」