「三十年前、私、恋をしたんです」 昔を懐かしむような、それでいて楽しそうな声で言った。 「恋、ですか」 「ええ、その頃の私はもう結婚していたし、六歳になる息子が一人いたけれども、その全てを捨ててもいいと思えるような」