ぶつけた鼻を押さえて小さくうめく。痛かった訳ではなかった。少し自分に情けなくなったのだ。
それでも何にぶつかったのかハッキリさせないといけないと涙目で恐る恐る顔を上げた。
居たのは知らない男子生徒。当然私よりも背が高い。比べていいのか分からないけど下手すると三神くんよりも高い。
「あ、あのっ、ごめんなさい……っ!」
あまりにも威圧感があったから、勢いよく頭を下げてそのまま小走りにその人の側を抜けた。
背の高い人怖い!男の子怖い!
内心で叫びながら走っていたためか、また意識が逸れて、
「きゃう!?」
短時間に二回も人にぶつかるという間抜けな行為を成し遂げてしまった。
さっき叫んだ事は嘘じゃない。なのに。
「逢坂から俺に飛び込んできた。大胆」
目を細めて笑う三神くんにはそれを一切感じなかった。