「クラウディオ・・・。

 レイはもう2度と私達の前には現れないかもしれないね・・・。

 どうしたらいいの・・・。」

 また涙が出てくる・・・。

 秋になると風も冷たくて空の色もなんだか物悲しい・・・。

 私は切なくて、悲しくて、どうしたらいいのかわからない・・・。

 レイが私を好きだと言って何度も抱いてくれたのが、つい昨日の事みたいで胸が苦しい。

 それからの私はまた眠れない日々がつづいて睡眠楽を手放せなくなり夜中にいきなり号泣したり何もかもが嫌になって死にたくなったりを繰り返した。

 朝になると、雨の日だと何故か心が休まる。

 お天気だとイライラして青い空に腹が立つようになっていった。

 レイと過ごした日々。

 レイがくれたたくさんの言葉・・・。

 頭の中はレイでいっぱいなのにレイはいない・・・。

 私は突然海が見たくなって海に向かって歩きだした。

 秋の肌寒さもなんだか気持ちいい・・・。

 レイと行った海が見たくなった。

 死ぬまで味方だって言ってくれたレイ・・・。

 無邪気に笑った顔があまりに幼くて動揺しながらも私はいつもレイを求めてた。

 潮風に吹かれながら私はだんだん自分の愚かさに涙が出た。

 でも、もう全部過去になっちゃった・・・。

 しばらく歩いてると、

「キャー、冷たいよ~~っ!」

 女の子の声がして、なんとなくその声のする方を見たら、見覚えのある自転車が停まってた。

「あれっ・・・?

 嫌だあー、も~~意地悪~~っ!」

 防波堤のすぐ下の石浜に若いカップルが楽しそうに波と戯れてるのが見えた。

 そして男の子が女の子の肩を抱き寄せてた。

 私はその光景に息が止まりそうになる。

「レイ・・・。

 レイ?」

 私は思わずふらつく。

 私にまったく気がつかない。

 レイだった。

 レイと女の子は、どこから見ても若いカップル。

 とてもお似合いだった。

 私はいたたまれなくなって、走り去った。

 私の存在などもうどこにもないって思い知らされた。

 当たり前だよ・・・。

 こんな年の凄く離れた既婚者の女に何のメリットもない・・・。

 私は家に帰ると部屋にこもったまま泣いた。

 もうレイはきっと私には戻らない・・・。