クラウディオがあわただしく泣き叫ぶ。

 私のお腹を必死で叩くクラウディオ。

 そしてベッドから飛び降りるとまるで私に何かを伝えるかのように誘導する。

「どうしたの?

 クラウディオ?

 私は眠い目を擦りながらクラウディオの後をついていく。

 クラウディオは縁側に近づくなり、

「ニャアーー、ニャアーー。」

と、歓声を上げた。

 そこには、うつ向いたままのレイの姿があった。

 私はあまりの事に驚いた。

「レイ?

 どうしたの?

 こんな夜中にどうしたの?」

 レイが膝を抱えたまま、じっと動かない。

「レイ?」

 満月の明るさにレイの横顔が揺れる。

 どことなく寂しそうに見えた。

「ごめんなさい・・・。

 俺、行くとこがなくって。

 ごめんなさい。」

 風が冷たい。

 夜はさすがに寒くなる・・・。

「一体どうしたの?」

 私はレイの背中に触れた。

 冷たい・・・。

「レイ。

 もしかしてずっとここにいたの?」

「2時間位前からいたんです

 ごめんなさい。

 俺、行くとこが思い付かなくって。

 てゆうか、あなたに会いたくて・・・。

 あの・・・。

 今日、母さんの彼氏が泊まりに来て、俺 そいつの事、大嫌いで俺んちアパートだから狭くて、そいつと母さんの声が聞こえて煩くて耳をふさいでも聞こえてて、もう我慢できなくなって飛び出してきたんです・・・。

 けど、行くとこがなくてつい来ちゃったんです。

 そしたらクラウディオに見つかっちゃいました・・・。」

「レイ・・・。」

 私は冷たい彼の体に抱きついた。

「すいません。

今日、夫さんがいるんですよね?」

「うん、いるよ。

 でもどうでもいいの。」

 私は、レイに抱きついたまま離れたくなかった。

「夜に縁側で2人って初めてだね。

 なんか夜って、ちょっと幻想的じゃない?

 ほら、今夜は満月でしょ?

 だから余計にそんなふうに思うのかもしれないわ・・・。」

 レイが私のパジャマのボタンをひとつひとつ外す。

「レイ?」

「ごめんなさい。

 俺・・・、もう我慢できない・・・。

 いいですか?

 あなたが欲しい。」

 私には何のためらいもない。

 私達は月明かりに照らされながらお互いを求めあっていた。

 夫は一度も起きては来なかった。