月の神―神話物語―

いくつの季節が過ぎただろう


晩夏の暁のこと


黒衣の神がいない時だった。



ふだんは鍵がかかっている窓がいきなり開き

大烏(オオガラス)が一羽、降り立った。



ピア



大烏は忘れかけていたわたしの名を呼んだ。


「おいで。お前の時は尽きた」