僕等の恋に愛はない


 麗は砂音の手を握ったりしないし、逆もない。

 
 いつも手を繋ぐのは、間に結姫が居る時だけ。

 だから二人は微妙な距離を保ちながら並んで歩く。

 「砂音。お母さんの喜ぶことをしよう」


 「アキラ。結姫ちゃんの喜ぶことをしよう」


 
 考えていることは同じで、やりたいことも同じで。


 互いが何を考えているかなんて手に取るようにわかる。


 それが煩わしく思うときだってあるけれど、少なくとも今はそれが嬉しく思う。


 わざわざ言葉にしたのは、気持ちの確認にすぎない。