結局私は、彼の声すら聞いたことがなかった。

一度彼と話がしたいと思っていた。

全てが、憶測であって真実ではないから。

真実は、彼にしかないのだから。


ただ、あの時閉じ込められる前


一瞬の彼の殺意のような感情を垣間見た

あの、いいようのない恐怖


全てがあの瞬間に凝縮され


思いだすだけで身体がこわばってしまう。


この間、声を掛けられた時、


また、彼に気づいてあげなかった。


あの時の恐怖がまた押し寄せてきた。


また、彼のこころのバランスを壊したかもしれない。


モ-リのいうトラウマがあたしにあるとするなら、


あたしの言葉が人を傷つけてしまっているかもしれないこと。


こんなに怖いのは、きっと今が幸せだから。


一つとして失くしたくないから。


どうか、あたしの不安が勘違いでありますように。