ずぶ濡れのあたしは、しばらく家の前に立ちすくんだまんまだった・・・。

 なんか不思議だよ・・・。

 雨に濡れててグシャグシャになってんのに気持ちいいんだよね・・・。

 あたし、とーとーおかしくなっちゃったのかなあ・・・?

 さっきまで激しく降りまくってた雨が嘘みたいにピタリと止んじゃった。

 なんか変だよね。

 青空が見えるし・・・。

 むせかえりそうな雨の匂いと髪を伝う水滴の雫の向こうに薄く虹が見えた。

 ぼんやりと見つめるあたし・・・。

 確かにあたし、純とちょっと前までいたよね・・・。

 チャリの後ろに乗って・・・。

 うちまで送ってもらったんだよね・・・。

 なんか、夢みたいな気がするよ・・・。

 一瞬だけ違う次元にワープしちゃったみたいな?

 薄く見えてた虹がだんだん濃くなってた。

 綺麗・・・。

 あたしはその虹に見とれてた。

 純もこの虹見てるかなあ・・・。

 なんて、あたしは何考えてるの?

 あたしは最低・・・。

 いつからこんなフラフラした奴になっちゃってたんだろ?

 あたしの彼氏は夕月で純には穂乃花がいるじゃん。

 今さら何考えてるの?

 あたしは玄関の戸を開けた。

「お母さん~~、お風呂入りたいから沸かして~~っ!」

 リビングから母親が出てきた。

「あんたどうしたの?

 こんなに濡れて・・・。

 傘持ってなかったの?」

「持ってなかったよ~~。

 だって、今日お天気だったじゃん?

 夕方んなって降りまくってるんだもん。」

 母親がタオルを持ってきた。

「夕立だね。

 タイミング悪かったね~~。」

 あたしはタオルで髪をふきながら2階の自分の部屋に向かって歩き出す。

 部屋に入ると同時に携帯が鳴った。

 夕月からだ。

「もしもし、青?

 凄い雨だったでしょ?

 大丈夫?

 ちゃんと帰れた?

 ゴメンね。

 さっき青の事追いかけたんだけど・・・。

 青、行っちゃったから・・・。

 彼氏とチャリで行っちゃったでしょ?

 だから、そのまま見送ったんだ・・・。

「えっ?

 どうゆう事?」

 あたしは携帯をギュッて握りしめた。