ポテトを運ぶ手が止まった。

 心臓がドキドキして聞かれちゃったらどうしようかと戸惑った。

 あたしは、

「あのね、あたし、まだ忘れられない彼がいるんだ・・・ 。

 でも、もうダメなんだよね。

 終わっちゃったから・・・。

 こんなあたしでよかったら、よろしくお願いします。」

 あたしの正直な気持ちを友夜に言った。

「ありがとう。

 今日から仲良くなろっ!」

 友夜は、海の匂いがする男の子。

 だけど、たまに凄く大人びて見えた。

 マックを出た時、なんとなく手をつないだ。

 デートなんて今まで、ちゃんとした事なんて1度もなかったあたしは、何もかもがドキドキだった。

 友夜はあたしにはもったいない。

 本当に彼女いないのかな?

 なんだか急に不安になった。

 あたしは、

「彼女とかっていないの?

てゆーか、今までいなかったん?」

 友夜は、

「いないよ。

 今まで一度もいない。

 俺さ、サーフィンとかに夢中で女に興味なかったんだ。

 でもさ、なんか気になっちゃってさ、そっちの事。

 だから勇気だして見たんだよね。」

 神様は意地悪だとずっと思ってた。

 これでもう、あの日にさよなら出来るって思った。

 あたしは握った手をギュって握り返して笑った。

 夏休みは始まったばかりだ。

 さっきまで握ってた友夜の手の感触にドキドキが止まらないあたしは、なんだか嬉しくって、足取りも超軽い。

 こんな短いスカート親父に見られちゃったら卒倒するな、と思ったらおかしくってたまんない。

 家に向かって歩いてたら、

「おいっ!」

て声が聞こえて、目の前に突然、純がチャリで現れた。

 なんで・・・?

 あたしは、

「どーしたん?

 なんか用?」

 精一杯平気なふりをした。

「お前、何でそんな不細工な格好してるん?

 似合ってねーし。

 全然不細工。

 ブス、最悪、ドブス、最低!」

 って、笑った。

「あんたに関係ないやろ?

 消えてよ。」

 あたしは、内心泣きたいのを我慢して、純をにらんだ。

「不細工なんにそんな顔したら、ますますブスじゃん。

 好きにしろ!」

 そう言ってチャリを飛ばして行ってしまった。

 一体何なんだよっ、ブスなわけないじゃん 。