“青・・・、青・・・。”

 あたしの名前を誰かが呼んでいる。

“青・・・。

 ねぇ、青、起きて・・・。”

“夢見てるのかなあ・・・。

 誰?”

純だ。

“待ってよぉ、純・・・。”

あたしは目を開いた。

友夜がすぐ目の前にいた。

「青ごめんね?

 俺、青の事誰にも渡したくないんだ。

お願いだからどこにも行かないでくれる?」

友夜は泣いてた。

友夜の涙があたしの瞼にこぼれ落ちる・・・。

「友夜・・・、泣かないでよ。

あたしはどこにも行かないから。」

いつもクールな友夜。

いつも冷たい目で遠くを見てた友夜。

友夜があたしを強く抱き締めてきた。

あたしは、そのまま静かに目を閉じた。

友夜は海の匂いがした。

あたし達はずっと一緒にいた ずっと抱き合ってたんだ。

カーテンで外の景色が見えない部屋にずっと二人っきりで。

あたしは友夜にしがみついてた・・・。

もうどうなってもいいって思ったから。

投げやりな気持ちなんかじゃなくて、友夜の事をあたしの全部で好きになりたいって思ったんだ。

あたしはもう純には戻れない。

「今、何時かな・・・。」

携帯を開いた友夜は、

「青、もう4時だよ、びっくりだよね。

なんかめちゃ幸せ過ぎて俺うれしいんだ。

青、もう少し一緒にいてくれないかな?」

「うん、もうちょっとだけ友夜といるよ。

6時には帰るね・・・。」

友夜は何度もあたしを抱いた。

それでいいって思った。

「青、俺・・・、青の為なら死ねるよ。

嘘じゃないから。

それだけは忘れないで欲しい・・・。」

そう言って何度もキスをした。

友夜はきっと他人には解んない何を抱えてる。

そんな気がした。

それがあたしには、まだ解んないけどそんな気がしてならない。

そしてそれは当たってた。

その時、まだあたしは知らなかったんだ。

友夜の悲しみが・・・。

でもそれはあたしが知っちゃいけなかった。

何も知らないのが幸せって時もあるんだよね?

友夜の体は冷たい。

体温が低いんだ・・・。

あたしは友夜にしがみついた。

つながってたいって思ったから。

あたしはもう振り返らない・・・。