「あんな奴・・・。

そうだ、友夜はあんな奴なんだよね。」

あたしは、なんだか泣けて来た。

「お前なんで泣いてんだ?

解った~っ!

俺の事が好きで好きでたまんなくなって泣けて来たんやろ?」

純は、さっきの恐い純じゃなくなってた。

いつものあたしの知ってる純だ。

「バーカ!

あんたのタバコの煙が目にしみちゃっただけや!

あんたなんか大っ嫌い、浮気男っ!」

そう言ってあたしは純の頭を叩いた。

「俺、浮気ばっかしてっかもしんねーけど、マジで好きな女ってのは、お前しかいない。

お前は俺の事好きなん? 」

あったり前や・・・、ってそこまで出かかって言葉につまった。

どうしょう・・・。

あたし・・・。

あたし・・・。

「どーした?」

純は、あたしを見た。

「あたし、友夜の事嫌いになれないよ・・・。

ごめん。」

夏はもうとっくに終わったのに、海の色が眩しくて目を伏せた。

あたしは純を残して走り去った。

あたしは多分、気付いていなかった。

自分の本当の気持ちに気付かないまま、ただつっ走るしかなかったんだ。

「青ー!青ー!」

純があたしの名前を呼ぶ声が響いた。

それでもあたしは振り返んなかった。

涙のせいで前が見えないよ・・・。

純に殴られ続けても無抵抗のままだった友夜。

虚ろな目で何を見てたの?

友夜の事を思うとあたしの胸は苦しくって、心臓が破裂しちゃうんじゃないかって思えるくらいに痛かったんだ。

友夜・・・。

 あたしは、やっぱ友夜を嫌いになれないよ。

 あたしは最低なんだ。

 悪いのは全部あたしだ・・・。

 2人とも好きなんて言えないよ。

 この時のあたしはただ自分の気持ちに嘘つけないって思ったんだ。

 それがどれだけ人を傷つけるかなんて、考えてる余裕なんてなかったんだ。