「君に何度も電話してたんだけど、

 出てくれないからさ、

 真里菜に聞いて、君んちに向かってた所だったんだ。

 ケガは大丈夫なの?

 ごめんね、俺のせいで。

 心配で眠れなかったんだ。」

 純は黙って、あたしの顔を見てた。

 あたしはうつむいたまま小さな声で友夜に、

「もう大丈夫。

 痛くないよ。

 今日学校休んだんだ。

 ずっと寝てたら楽んなったから、

 もう心配しないで。」

 友夜は、あたしの頭を撫でると、

「ずっと側にいてあげるからね。」
 
 って笑った。

 黙ってずっと見てた純が、友夜に向かってこう言った。

「てめぇ、なんか変じゃね?

 こいつに何かした?」

友夜は、純の方を見ると、

「お前に関係ないだろ。

 消えろ!」

 そう言って睨んだ。

「やっぱ変だぜ、俺には解る。

 ガキん時からこいつの事見て来てっから全部解る。

 てめぇ、こいつに何かしたな?」

 すると、友夜は静かにこう言った。

「お前には関係ない。

 消えないなら、ぶっ殺す!」

 夏はもうとっくに終わってしまってるのに、あたしには蝉の声が聞こえたような気がしてた。

 その後の事は何も覚えていない。

 遠くで聞こえる2人の言い争いの声も聞き取れない。

 あたしは耳をふさいだまま、うずくまるしかなかった。