「ごめんね、痛かったよね?

 大丈夫?

 俺、興奮しちゃったみたいで本当にごめんね。

 ブレーキ効かなくなっちゃったんだ。

 許して。

 青、ケガしてるよ、俺んち行こう。」

 震えながら、あたしに抱きつく友夜に、何か言う気持ちさえ起きない。

 あたしは、フラフラと立ち上がると、

「いいよ、1人で帰れるから。

 うちに帰る。」

 そしてゆっくりと歩き出した。

「なんで、なんで言う事が聞けないんだよ!

 俺んち行こうって言ってんだろー!」

 友夜が叫んだ。

 あたしは振り返える事なく真っ直ぐに歩いて行った。

 家に帰るとお母さんが、

「どうしたの?

 あんた血が出てるよ!」

 と、驚き、

「取りあえず消毒して明日、病院行く?」

 って聞かれた。

「そうするよ、今日はもう寝る。」

と、あたしは自分の部屋に行った。

 頭のクラクラは楽になったけど、額の傷がズキズキ痛い。

 鏡で見てみたら、ちょっと擦り傷みたいになってた。

 お母さんが消毒してくれて、そのまま眠る事にした。

 あたしは友夜の豹変ぶりが信じられないまま、虚ろな目で天井を見つめてた。

 傷の痛みなんか全然気になんない。

 あの時の友夜の凍りついた表情が忘れられない・・・。

 今まで何があっても変わらず、優しかった彼が、変わってしまった。

 あたしのせいで我慢の限界ぶっ越えさせちゃったんだ。

 あたしが全部悪いんだ。

 花火大会の日の事、初めてのキス。

 全部嘘なんかじゃない・・・。

 あたしは自分が怖くなった。

 私は友夜の事も好きなんだ・・・。

 どうしょう、胸が痛いよ・・・。

 誰か助けて・・・。

 あたしは、いつの間にか眠ってた。

 朝になると傷みは無くなってた。

 お母さんは、

「どうする?病院、今から行く?」

 って聞いてきたから、

「行かない、大丈夫みたい。

 今日、学校休む。」

 お母さんは、

「でもあんた、どうしてそんなとこケガしたの?」

って、心配そうにあたしの額を見る。