あたしにはもったいない。

 でも・・・、

 もう、自分の気持ちに嘘はつきたくないんだ。

 傷つけるのは嫌だよ。

 本当は自分が辛いから逃げちゃいたいだけなのかもしれない。

 あたしは最低だ。

「あのね、ごめんね。

 あたし、やっぱ、もう友夜とは付き合えないよ、純が好きなんだよ。

 ごめんね。」

 夏は、もうとっくに終わったはずなのに、なんだか夏の匂いがした。

 海が近いからなんかじゃない。

 友夜の匂いだ。

 あたしは頭を下げたまま、彼の顔を見られないでいた。

 友夜は、

「解ったよ、君の気持ちは変わらないんだね。

 もう解ったから顔を上げて。」

 あたしはゆっくりと上を向いた。

 友夜は優しい笑顔でつぶやいた。

「ごめん。

 俺、いい人になれないから、君の事、諦めない。

 君があいつと会ってたって、君があいつと何をしてたって、俺は君を好きな気持ちは絶対に変わらないし変えるつもりもないから!」

 夏はとっくに終わったのに、あたしの夏はまだ終わっちゃいなかった。

 このまま夏にダイブして、潜って息も出来ずに死んじゃいたい。

 この時、本気でそう思った。

 あたしは最低で最悪だ。

 リサと友夜は傷ついてる。

 あたしが純を好きになったら、傷つける人がいて苦しむ人がいる。

 あたしはどうしたらいいんだろう?

 友夜の悲しそうな目が忘れられずにいつまでも立ちすくんだままだった。