穂乃花は焦っていた。

 いつも何かに追いたてられてるような・・・。

 毎日苦しかった。

 苦しくて、苦しくて、息苦しくなって発作が起きる・・。

 その後の事はよく覚えてない。

 正直まったく覚えてない。

 自分が何してたのか?

 自分はなんでこんな場所にいるのか?

 そんな事ばかりが続いた時、どうしていいのか解らなくなった穂乃花はいつからかリストカットをするようになってた・・・。

 一瞬の痛みに自分が生きてる意味を解ろうとする。

 そして、にじむ血の筋をいつまでも見つめるのだ・・・。

 そんな日が何日も続く時もある。

 穂乃花は誰かに助けてもらいたかったのかもしれない。

 自分の本当の気持ちとか自分の本当の姿を誰かに見つけてもらいたかったのかもしれない・・・。

 穂乃花の姉は進学校に通う優等生だ。

 頭が良くて綺麗で、母親の自慢の娘。

 母親はいつも、

「お姉ちゃんを見習いなさい。」

 そう言って、穂乃花に冷たく当たる。

 穂乃花の父親は、単身赴任で家にいない。

 海外赴任で、赴任先の社内で女を作り、多分もうすぐ離婚するかもしれないって状況だ。

 母親はますます機嫌が悪い。

 母親の期待はすべて姉にある。

 そして姉もそれを解ってた。

 穂乃花はなんとなく疎外感を感じてた。

 ピアノに英会話に学習塾・・・。

 穂乃花は母親の期待に答えたかった。

 実在、穂乃花は成績が良かった。

 それでも姉を越えられない。

 姉は穂乃花にとって大きすぎる・・。

 そんなプレッシャーに押しつぶされそうになる毎日は彼女を壊れさせていた。

 ある日、彼女はとてつもない息苦しさに襲われ動機がとまらなくなった。

 めまいがして頭がクラクラし、その後の記憶がまったくない・・・。

 そして、気がついたら知らない場所で知らないメンバーの中にいたり、街をふらついてたりと自分ではまったくわけが解らない行動をしてたりする・・・。

 自分でコントロール出来なくなって来てる事に動揺し、どうしたらいいのか解らなくなっていた・・・。

 知らない仲間といる時、違う名前で呼ばれてる事に疑問を持ちながらも、居場所のない穂乃花は流されてた・・・。

 エレナ・・・。

 皆はそう呼んでた。