そんなある日、母親の帰りが遅くなる日が続き、父親といつものようにケンカになった。

 父親は家の壁や窓を割り大暴れしている。

 母親は逃げ回り、その後を父親が追いかけ馬乗りになって、殴り続けてた。

 母親の叫び声に耐えれなくなった幼い彼は耳をふさいでうずくまった。

「早く終われ。

 早く終われ!」

 何度もそう言い続けてた。
 
 父親がいきなり家を飛び出して行き、母親は泣き崩れ、友夜は母親に寄り添った。

 母親は、

「ごめんね、もうパパとは一緒に暮らせない。

 ママ、遠くに行くね。

 あんたを連れてく事は出来ないの。

 ごめんね。

 ママを許して。」

 母親はそう言って、友夜を抱き締めた・・・。

 幼い彼には母親の言っている事の意味が理解出来なかった。

 彼はこの時まだ3才で、大人たちの行動を理解するには幼すぎてた。

 彼の両親はデキ婚で母親が彼を産んだのが16。

 高校を辞めて彼を産んだのだ。

 この時、父親は17才。

 双方の親は反対し、2人は家を飛び出した。

 そんな2人の間は冷えきり、次第に父親は母親に暴力を振るうようになった。
 
 定職につかない父親はまだ遊びたい盛りで、母親が働いた金を持ち出したり、女遊びにをしたりで家に帰らない日もあった。

 次第に母親の心も壊れて行った。

 母親はパートに出るようになってから帰りの時間も遅い時が続き、不信に思った父親は母親を問いただすと、母親には好きな男がいたのだ。

 母親は父親に別れを切り出したが、了解せず、狂ったように母親に暴力を繰り返す。

 もう限界だった母親は、友夜を残して、その夜、家を出た。

 彼が寝静まった後に母親は彼の枕元に、彼が前から欲しがっていたおもちゃを置いていった。

 何も知らない友夜は、朝、それを見て嬉しくて大喜びした。

 しかし、父親は母親が居なくなった事に激怒し、色々な知り合いに連絡していたけど捕まらないらしく、壁を殴り、もの凄い形相で友夜を見た。

 彼の持っていたおもちゃを取り上げると、窓の外に放り投げた。

 あまりの恐怖に動けなくなったままの友夜を、ベルトで殴り首を締め、ぐったりとした彼を部屋に放り出して父親は出て行った。

 友夜には意識があった。

「ママ、早く帰って来て・・・。」

 何度も小さな声でつぶやいた。