友夜は冷めてた。

 いつも何かに期待したりはしない。

 特別喜ぶ事も、悲しむ事もない・・・。

 そんな喜怒哀楽なんてのは友夜にはうざくて邪魔な感情でしかない。

 中学2年の男の子にしてはクールでちょっぴり大人びた彼は口数は少なく、単独行動を好みそうなタイプだ。

 たぶん女の子から見たら話しかけずらい男の子だった。

 けど、友夜の事を好きって女の子はたくさんいて、でも誰も彼に近づく事はなかった。

 何故なら友夜には他人を寄せ付けない雰囲気があって、皆それを感じてたからだ。
 
 友夜の生い立ちは、かなり複雑だった。

 父親と母親は、しょっちゅうケンカばかりしていて、その原因は父親の暴力。

 父親は気に入らない事があると母親に手をあげる。

 幼い彼はその様子を見て育った。

 そして、ついに父親は彼にも手をあげるようになる。

 幼い彼を必死で守る母親を蹴り飛ばし、友夜を殴り続け、そんな事を毎日繰り返してた。

 仕事にもろくに行かず家でゴロゴロしている父親は、何かの瞬間、突然キレて、その腹いせに彼を殴る蹴るの乱暴を繰り返す。

 母親がいれば助けてくれる。

 しかし働かない父親の代わりに母親が生計をたてなければならないので、家には父親と彼の2人が残ってた。

 母親はパートで夕方にならなければ帰らない。

 それまで父親と2人きりである。

 父親は幼い彼にまったく愛情を注ぐ事はなく、気まぐれに、彼を殴ったり蹴ったりをひたすら繰り返してた。

 彼の体には無数のアザや傷跡が残り、仕事から帰った母親は、それに気づいても父親から同じように暴力をふるわれ、幼い彼を救うすべはない。

 どこかに預ける手立てもなく、友夜はこの現実から逃れようがなかった。

 子供は親を選べない・・・。

 友夜は、じっと耐えるしかなかった。