「ねぇ、さっきさあ、夕陽がめちゃめちゃ綺麗だったよ。

あんた見てた?

なんかみかんみたくって感激してたんだよ!」

「 みかん?

そうやな、夕陽が綺麗やったわ。

 お前も見てたらいいなって思ってたんだよね。

 見てたよ、ずっと見てた。」

 純のチャリの後ろに乗っかって、背中に顔を埋めた。

「お前、ここまで歩いて来たん?」

「 そうだよ、家から歩いて来たんだ。ずっと夕陽を追いかけながら歩いて来たんだ。」

「そっか、今からどっか行く?」

「あのね、なんかお腹すいたからマックがいいよ!」

「 お前、家帰って飯わねえの?」

「家に帰りたくないもん。

 まだ帰りたくないよ。

 ねー、行こっ。」

「俺、金ないんだけど。」

「いいじゃん。

 私の食ってるとこ見てたらいいよぉ」

「半分くれっ。」

「やらんわ。」

「くれっ。」

「やらんやらん。

 絶対にやらんよーだっ! 」

「なんだと~。」

 純はチャリのペダルを勢いよくこぎ出した。

 海岸通りの道をチャリで2人の乗りしながらあたしは笑ってた。

 だって楽しいんだもん。

 あたしは純が好きだ。

 大好きだ。

 ギュッてしがみつたまま空を見た。

 その時、流れ星が一瞬サッと消えた。

 願い事するのも忘れちゃった。

「純、今、流れ星が見えたよ!

 でもすぐに消えちゃった。

 お願い事出来なかったよ! 」

「願い事?

 解った。
 
 俺とずっといたいと思ってたんだろ。

 そんなもん星にいちいち頼まなくたって俺に頼めよ。

 てゆーか、ずっと一緒やから」

 純が、そう言った。

「中学んなっても一緒にいてよね?」

「あったり前やろ。

 お前と俺ってスペシャルだぜ!

 誰も邪魔できねーし。」

 あたしは、今でもこの日の事が忘れられない・・・。