「なんで、こんな事になっちゃうのかしらね・・・。」

 母親は蘭を睨む。

「夕月があんたなんかに手を出すわけないわよ。

 どうせ、あんたが嘘ついてるんだろうけど、お父さんったらあんたの嘘にまんまと騙されちゃって呆れてものが言えないわね。」

 母親は蘭に向かって、いやみたっぷりな顔をした。

 リビングでお菓子を食べながらTVを見てる蘭がウザそうに母親をシカトする。

「蘭ちゃんは嘘つきだけど、そんな蘭ちゃんをお父さんは騙されたふりをしてるのかもしれないわね?

 だって、お父さんは夕月の事が大嫌いみたいだから・・・。」

 夕月はヘッドホンをあてたまま、荷物をまとめる。

 2階の部屋を往復して玄関に荷物を置いていく。

 母親はそれを整理して父親が頼んだ知り合いの運送屋に運び出させる。

「案外、早く済んだわね。

 夕月、あんたが出てく事なんかないのに 私もあんたのアパートで暮らそうかしら?

 あんたがいなくなったら、蘭ちゃんと2人っきりになっちゃうじゃない?

 私は嫌だわよ。」

 ソフアーに寝そべりながらTVを見てた蘭が起き上がった。

「あたしも、あんたと2人っきりなんて吐き気がするわっ!

 お兄ちゃん~~、蘭がお兄ちゃんのアパート行こっかな?」

「何バカな事言ってるの?

 あんたのせいで夕月がこの家から出てく事になったんでしょっ!

 あんたおかしいんじゃないの?」

「あんたは母親そっくりだわ。

 あんたを見てるとイライラしてくるわよっ!」

「母さん、蘭を責めないで。」

 夕月は荷物を持ちながら母親の顔を見る。

「だって、こんなのおかしいわよ。

 あんたは何も悪くないのに・・・。」

「母さんいいんだ。

 僕、1人暮らししてみたかったんだよね。

 ほら、ちょっと前まで母さんと2人っきりだったし、あんまり状況は変わんないよ。」

「夕月~~。」

 母親は夕月の腕を撫でた。

 父親は仕事でいない。

 父親は休みがほとんどない人で仕事ばかりの人だったから。

「行きますか?」

 運送屋の声がした。

「じゃあ、またな蘭。

 母さんと仲良くしてよね?」

 唇をキユッと摘むんだままの蘭はただ夕月の目をじっと見てた。

 扉が閉まる・・・。

 夕月は家を出た。