「ごめん。

 あのね、別に純の事を考えてたんじゃないんだよ。

 ちょっと思い出しちゃっただけだから。」

「解ってるって。

 全然平気。」

 友夜はそう言って笑った。

 あたしは最低だ。

 無言のまま、部屋に流れる音楽のボリュームだけが異常に大きく感じた。

「あのさ、青、俺ね、青の事が好きなんだよね。

 だからさ、もうあいつの事忘れて欲しいって思ってる。

 でもそんなの無理だよね。

 いきなり忘れれるわけないもんなー。

 でも1日であいつの事、考える時にちょっとだけでも俺の事も思い出してくれたら、うれしいかも。」

 そう言うと、友夜は寂しそうに笑った。

 どうしよう・・・。

 あたしは彼を傷つけてしまったんだ。

 友夜はあたしにはもったいない。

 あたしは、まだ気づいてなかった。

 自分の本当の気持ちに・・・。

 でもこれだけは解ってた。

 もう純には戻れないって・・・。

「お父さん、何時に帰って来るの?」

「12時だって。

 飲み会に行ったんだ。

 サーフィン仲間の飲み会だよ。」

「そうなんだ。
 
 そう言えば、お母さんって、仕事?
 
 何時に帰って来るの?」

「母親はいないよ。

 ずっといないんだ。
 
 俺が産まれて、すぐに死んじゃったんだよ。」

 私は焦った。

「ごめんね。」

「いいよ、知らないんだ。
 
 写真でしか知らないから。」

「あたしんちのお母さんは、2番目の人で、本当のお母さんは、あたしが幼稚園児の時に病気で死んじゃったんだよ。

 今のお母さんは小3の時に来たんだ。

 それまで、お父さんと2人暮らししてたんだけど、お父さんの兄さんちにいたおばーちゃんを引き取って、今は、4人暮らしになっちゃった。」

 黙って聞いてた友夜は、

「俺は、青とお父さんが、海で楽しそうにしてたの何度も見てたよ。

 青は元気な女の子で、多分あの時、俺は青の事が好きになってたような気がする。

きっと初恋だったのかもって思うよ。」

 私は真っ赤になった。