「夕月はお腹減ってないの?

 なんか悪いよ。

 あたしだけって、それにお金っ!」

 あたしは鞄から財布を出す。

 財布の中には千円しか入ってなかった。

「今日、千円しか持ってないから今度、電車代返すからとりあえず千円受けとってくれる?」

 あたしは夕月に千円札を手渡した。

「いらないっ。

 受け取れないよ。

 僕が誘ったんだよ。

 青はついてきただけでしょ?

 お金の心配はしなくていいから。

 これはしまってね・・・。」

 夕月はあたしの千円札を返した。

「わかった・・・。

 けど、いつかお礼くらいさせてよ。」

「そうだね。

 お礼は僕から絶対に離れない事かな・・・。

 公園に着くとブランコがあって、あたしはそのブランコに無性に乗りたくなっちゃって子供ん時みたいに勢いよくこいでみた。

 隣の夕月も一緒にこぎ始める。

 子供ん時に見た空の位置が違ってる。

 当たり前だよね・・・。

 背が伸びたんだから・・・。

 小5ん時、うちのうらの公園で純とブランコしてそん時にあいつからコクられたのを急に思い出してた。

 なんか懐かしい・・・。

 思わず笑みが漏れた。

「青?
 
 楽しそうだね・・・。」

「えっ?」

 夕月が笑う。

 あたしは自己嫌悪になる・・・。

 なんで純の事なんて思い出すんだよ・・・。

 ブランコをこぐのを止めるとジャムパンを一口かじった。

「おいしぃ~~っ!」

「青、好きなんじゃないかって思ったんだ。

 よかったあ~~っ!」

「うん。

 おいしいよ。

 ありがとっ。

 夕月も半分食べなよ~~?」

「その分もらったら青、お腹すぐに減っちゃわない?」

「夕月ったら~~、あたしはそんなに食いしん坊じゃないもんっ!」

「じゃ、半分もらうよ。

 ね? 青。

 初めて海で僕たちが出会った日の事覚えてる?

 あの時さあ、青が僕にクレープ半分くれたんだよね。

 なんかあの時の事を思い出しちゃったよ。

 僕さ、あの時きっと青の事好きになっちゃってたんだよね・・・。」

 照れくさそうに笑う夕月に心が痛んだ・・・。

 さっきあたしは純の事を懐かしく思い出してた・・・。

 あたしってやっぱ最低だよな・・・。