やがて、わたしが少し落ち着いてくると、ふわりと腕の力を緩めたのだった。
「なにされたか言えるか?」
先生の両の手のひらがすっぽりわたしの顔を包んでいる。
なぜか、額どうしがくっついていて、いろいろな意味でくすぐったい。
「脚……太もも、触られただけ、です……」
「本当だな?」
小さくうなずく。
先生は、もういちどわたしを抱き寄せると、そうか、とひとりごとみたいにつぶやいた。
「よかった」
「せんせ、」
「なにもされなくて……おまえに万が一のことがなくて、本当によかった」
噛みしめるような言い方にまた涙が出そうになる。
先生がなにも言わないので、そのまま泣いてしまう。
ヨウ先生の腕のなか、眼鏡のない先生なのに、嘘みたいに安心するのはなぜだろう?
「……先生」
「なんだ」
「――好き……」
自然とこぼれ落ちていた。
その2文字は、じわりと夜の闇に溶けていったあとで、やっとわたしの耳まで届いてきたのだった。



