「…………っ、」
先生、
と、呼びたいのに、うまく声が出せない。
それなのに、体の震えだけはいっこうに止まらず、わたしはその場に座りこんだまま先生を見上げるしかなかった。
「……野村、」
「あ……せん、」
「無理に喋らなくていい」
それは、とても、自然な行為だった。
「もう大丈夫だ」
先生の温もりがわたしをそっと包みこんでいる。
それを認識した瞬間、言いようのない安心感が津波のように全身をめぐって、わたしは嗚咽した。
「おまえを襲った男な、昼間、おまえらの店にいたんだよ」
「え……」
「ずっとおまえのこと見てたから気になった。……ちゃんと、あいつのほうが、絶対にひとりで帰るな、送ってもらえ、と言ったはずだろう」
ぎゅう、と先生の腕に力が入る。
それに応えるように、思わずわたしも抱きしめ返すと、髪を撫でてくれた。
慈しむような、やさしい、やさしい手つきだった。
「……ごめん、なさ……」
「このバカが」
「……ッ、ごめんなさい……」
先生は、温もりを分けてくれるみたいにわたしを抱きしめながら、ぽんぽんと頭を撫でるのをやめない。
「怖かったな」



